けっこうばっさり。

暑苦しい前髪とはこれでおさらばですよ。
 
現在、なのは関連イベント以外ではじめて参加申し込みを検討中のイベントが一件。
京都で九月にある百合オンリーイベント「maiden's garden2」です。
いやまあ、ぶっちゃけマリみて本書きたいなあってだけなんですが(汗
問題は二点。自分が書くとおそらくソフト百合が限界でガチ百合にはまずならないってこと。
もう一点は
 
次のマリみて新刊がいつで、次回で祐巳瞳子が姉妹にきちんとなってくれるのかということ。
 
まあ、後者は多分新刊が出るにしても九月だろうから、それにあわせた話ってのは無理だろうなぁ。書くとしたら乃梨子瞳子の話かな?
締め切りまでに参加するかどうかじっくり考えてみるとします。
 
では、Web拍手レスを。
 
>シグナム…せめてフェイトの面接終わるのを待ってから事故のこと言ってやれよー、とつい思ってしまった。
シグナムもきっと動転してたんですよ。はやてが病気だった頃のことといい、なにげに冷静なようでいて彼女、身内の危機に周りが見えなくなる部分があるように思いまして。ヴィータもその辺は似たもの同士かもしれません。

 
>こんなに素晴らしいなのはSSを読ませて頂けて、今とても幸せです!連載物、頑張って下さい!
ありがとうございますー。頑張れといわれればもちろん頑張るさあ。
 
>とうとうスレから本格引退ですか。お疲れ様でした。これからは保管庫で過去作を、ブログで新作を楽しませていただきます。ブログ、これからも頑張って下さい!
老兵は去りゆくのみ……とか、そんな感じです、はい。老害ダメ、絶対。引き際が大事。
これからは一読者としてあのスレを楽しみたいと思います。
 
 
 
んで、十歳のパパとママ第二話、更新します。
 
↓↓↓↓
 
 
 
今頃は六課のみんなは平和に、訓練や日常の業務に励んでいるのだろうなぁと、しみじみと思う。
 
「キャロ、換えのおむつは!?もう一枚!!」
「え!?えっと、えっと、そこの戸棚に……」
 
休暇はありがたい。それはもちろんそうだ。
三日間をこれから過ごすこの世界も、以前訪れた時と同じく恩師が幼き日々を送った場所として頷けるほど、過ごしやすい良い場所だ。
 
「あ、あった!!って、った、うわっ!?」
 
もっとも、休暇が休暇として、休暇になっているかといえば甚だ疑問ではあるが。
 
爪先立ちで手を伸ばした先の戸棚から乳児用の紙おむつのパックが滑り落ち、指先をすり抜けて転がっていく。
軽い音を立てて跳ねること、二度、三度。
滑りやすいビニール製のパックに包まれた五十枚入りの紙おむつは、汚れたそれを換えてくれるのを今か今かと待つ赤子の下に迫り。
 
見事に、幼子の頭を最後のジャンプ台にして床を滑っていく。
 
「「……あ」」
 
そして痛かったかどうかというのは赤ん坊にとって、さして重要なことではない。
不意に自分を何かが襲った、それだけで理由は十分。
赤子のお仕事、それは即ちよく食べよく眠り、よく出して、そして──よく泣くこと。
 
当然の如く声を上げて泣き喚きだした二歳児と、同じくもらい泣きでぐずりだした泣き声の競演に、少年少女はがくりと肩を落とした。
 
泣きたいのは正直言って、こちらのほうだ。
赤ん坊を相手に当たることもできず、言っても仕方のない愚痴を、飲み込んで。
 
二人はがっくりと肩を落とし、幼子達を宥めあやしにかかった。
 
 
魔法少女リリカルなのはstrikers 外伝 −十歳のパパとママ−
 
第二話 異邦にて、二人
 
 
「しっかし情けないなぁ、クロノくん。権力はあるんやからちょっと無理言って仕事一日くらい断ったらええのに」
『……面目ない』
 
時を同じくして、機動六課部隊長室。
 
「そら、なんもかんも新しいもん尽くしの新造艦やし?艦長として不安なんもわかるけど。家族サービスの意味ないやろー、それじゃ」
「家庭も大事にしなきゃだめだよー」
『……すまん』
 
次元の海の遥か彼方、物理・概念両方の距離はいかばかりだろうか。
その気の遠くなるような距離を隔ててなお、肩を落とす青年に三人の少女たちは急角度のビーンボールを的確にえぐりこんでいく。
 
正確には、主に二人が。約一名はいらいらと部屋の中を腕組みしていったりきたりしているに過ぎない。
 
「……エリオとキャロ、大丈夫かなぁ」
 
いや、だってぶっちゃけた話をすれば、今のフェイトには兄の事情なんてどうでもいいのである。
 
エイミィと母が一泊二日で温泉旅行に出かけていることなんて本人たちからのメールで知っていたし、
昨日今日と無限書庫の書庫内整理でアルフが家を空けていることも同様。
というかユーノからわざわざする必要もない連絡が来たんだから何か察しようよなのは……というのは話が逸れるから置いておくとして。
 
問題は、子供たちの世話をするために休暇をとって家に戻るはずであったクロノが急な任務で、帰れなくなったということ。
いや、実際帰るには帰ってきたのだが、殆どとんぼ返りに近い形で自身の座乗艦・クラウディアに戻らなければならなくなったということが問題の本質。
 
そして困った挙句に助けを求めてきた先が妹であるフェイトに対してであり、
兄からの急な要請に都合のつかなかった彼女の代わりに海鳴に飛ぶことになったのが、
ライトニングのフォワードコンビ……エリオとキャロだということである。
 
幼い二人が、そして生後まだ二年経っていない甥と姪のことが、心配でならない。
 
「ま、後々エイミィさんにはしっかり報告しとくから」
『なっ!?そ、それは!!それだけは……』
「だーめ。二人旅を邪魔するんはわるいけど、その辺はきちっとさせていただきます」
「はやて」
「あっ」
 
ああもう、邪魔。──とばかりに、はやてに反論しかけたクロノのモニター画面をシャットダウンし、親友のデスクへと詰め寄るフェイト。
もとから女三人寄れば扱いがぞんざいな兄である、今更気にする必要はない。
 
「やっぱり私にも休暇もらえない?二人がちゃんとやれてるか不安で」
「却下。最初に無理や言うたやろー」
 
だが、休みがもらえるかどうかとは話が別。
 
身を乗り出したフェイトの頼みを、はやてはにべにもなくあっさりと退ける。
 
「あの二人以外には今のところ、無理やって」
 
法務捜査の主任であるフェイトに今抜けられては困る。
六課の実務的な面でも、査察を受けたばかりの体面としてもまずい。
いくら、身内の頼みとはいえ人員をほいほいと割くわけにはいかなかったのである。
 
「ちょーど、つっこまれてた部分でもあったし。エリオたちになったんはしゃあないやろ」
 
一方歳若い、幼い二人については正反対。
査察の際、若年職員に関する本局超過勤務規定に濃密過ぎる訓練と拘束時間が抵触するのではないか、という指摘を受けたことが問題であった。
 
故に少年少女たちには休暇を与える必要がその追及をかわす上でも必要でありまた、それを口実に忙しいフェイトに代わり海鳴へと向かうべく白羽の矢が立ったのである。
新設でメンバーもぎりぎりの数しかいない六課にはこれ以上の人員を子守のためにわざわざ休ませておける余裕はない。
 
もっとも二人のそれは正確には休暇ではなく、出張扱いではあるが。
なにしろ陸士部隊の査察はどのような細かい部分を攻めてこられるかもわからない、厳しいもの。
一度受け流すことが出来たとはいえ、常に警戒は続けておかなければいつまた突然に無理難題を出されるとも知れない。
おまけに相手はあの海千山千のレジアス・ゲイズ中将の息がかかった連中が中心となっているのだ。
はじめからこちらの穴を見つけ、それを材料に責めることが目的と考えてもほぼ差し支えのない相手と考えていい。
 
政治屋……あまり使いたくはい言葉ではあるが、彼らというのはそういうものだ。
 
六課も、六課の後ろ盾たる聖王教会も。はやて自身も彼によくは思われていないことくらいは自覚している。
掌を返して今度は徒に部隊員に対し休暇を与え業務を怠っているなどといわれてはたまったものではない。
どちらにも逃げ道を用意しておく必要があった。
 
以前海鳴に出張した際に回収したロストロギア及び自分たちの行使した魔法が管理外世界へと与えた影響調査と、無限書庫司書長・ユーノの予備実地調査によって提出された数値の現場再確認とが名目上の出張理由になっているのは、そのためである。
 
「う……でも二人とも、ヴィヴィオとの仲直りだってまだだし。それでカレルたちの世話なんてとても──」
「心配しすぎやて。一応アリサちゃんたちにもフォロー頼んどるわけやし」
 
そのために携帯の使い方を教えて、フェイトのものをエリオに渡してあるのだから。
対策としてはこんなものだろう。
 
「二人ともフェイトちゃんが思ってるよりずっとしっかりしてると思うよ?保護者としてもっと信じてあげようよ」
 
あんまり過保護すぎるのはよくないなー、フェイトママは。
 
なのはからもはやてに同調する意見でたしなめられるフェイト。
 
でも。
だって。
それでも。
 
過保護といわれようと何と茶化されようと、心配なものは心配なのだ。
一応自分でも少しは、心のどこかで自覚していたようである。
 
「なのはは何にでも誰にでも、少し厳しすぎるのっ!!はやては楽観的で放任すぎ!!」
 
真っ赤になってつい大きな声をあげてしまったのは、多分そのせいだから。
これ見よがしに顔を見合わせるなのはとはやての大袈裟な仕草が、なんとも腹立たしい。
 
*   *   *
 
「やっと……寝てくれた……」
「うん……」
 
時刻は、正午をやや過ぎたところ。
ケリュケイオンのナビに従って辿り着いたハラオウン家にて、慌しく出て行く家主から鍵を受け取って、見送って。
まだわずかに数時間しか経っていないというのに、キャロもエリオもへとへとだった。
 
それもこれも、柔らかいカーペットの上でタオルケットに包まって寝息を立てる双子たちのおかげ。
 
かわいい顔をして双生児たちは、ガジェットドローンなど比較にもならぬような強敵であった。
なにしろまず、理屈が通じない。赤ん坊というものは興味に向かいただまっすぐ突き進む。
どんな障害があろうと、それによって痛い思いをして泣かされるとしても。
何度も何度も、それを繰り返す。
 
泣く子をあやし、収まったと思ったらまた別の問題発生。そして部屋は再び幼児たちの泣き声で満ち溢れる。
 
飲み物をあげたり、おもちゃで遊んであげたり、宥めすかしたり。
振り回されてばかりが、ひたすらループする。
 
ヴィヴィオはまだ大人しいし、ひとりを六課全員で面倒を見ているようなものだからまだよかった。
……ということに、思いっきり気付かされた。
もう、くたくた。元気いっぱいの子供たちの子守にマンツーマンで望むのが、こんなに大変なものだったとは。思っていた以上で、想像を超えていた。
おもいっきり両方の羽を引っ張られて痛い目をみたフリードなどは子供たちを恐れて戸棚に閉じこもってしまっている。
 
「「……」」
 
お互いもう、しゃべる気力も湧かない。
二人並んで、ぐったりとリビングのソファに身を沈めるばかり。
テーブル上のオレンジジュースも殆ど、手付かずのままだった。
氷の入っていないそれは室温で、温もってしまっていることだろう。
 
「……あ」
「?」
 
くー、きゅるるる、という気の抜けるような音が、BGMのない二人の間を通っていった。
 
子供たち?いや、どちらもぐっすりと寝ている。
 
フリード。音の籠もる上に距離のあるキッチン戸棚から発したとして、こんな明確な音が聞こえてくるだろうか。
今の音の感じは、大体知っている。
人が生物である以上活動に必要なエネルギーを肉体が欲する、生理的現象により体内から発せられる音、即ち──……。
 
「……あ、ははっ。…………お腹、空いたね」
「キャロ?」
 
キャロのお腹が鳴った音。空腹を告げる彼の腹の虫からの、コールサインというやつである。
恥ずかしそうにお腹を押さえる彼女を、エリオはきょとんと見返して、そしてつい、吹きだした。
 
「もう、お昼の時間帯か。ご飯、食べよっか」
 
二人、ぬるくなったオレンジジュースを胃の中へと流し込む。
胃にカロリーが入ってエリオもまた、自分が空腹であるということに気付く。
子供たちが眠っている間に、済ませてしまったほうがいいかもしれない。
 
「クロノさんがお金置いてってくれたし……何か買ってこようか」
「あ、待って。……あの、冷蔵庫の中、見た?」
 
腰を埋もれさせていたソファから、よっこらしょ、と立ち上がるエリオ。
ショッピングモールには近いし、適当に歩けば何か見つかることだろう。
 
予測を立てて立ち上がったエリオをしかし、キャロは呼び止める。
行かないの?と首を傾げた彼に、キャロは妙な質問を浴びせてきた。
 
「冷蔵庫?」
「うん、結構お野菜とか食材、いっぱいあったんだけど……二人を残して出かけるわけにもいかないし」
 
いや、それは別にどちらか片方が残っていればいいのでは。
二度、三度。キャロは目線を落とし、言おうか言うまいか迷っているように見えた。
もじもじと胸の上で組んだ手が、落ち着きなく動く。
 
「よ、よかったら、私が作るよ。お昼ご飯」
「え?」
 
キャロの上目遣いが、ダメかな?という風に問いかけていた。
そして訓練中よくやるように、組んでいた両手を解いて、小さくガッツポーズをしてみせた。
 
「おいしいもの、作るから」
 
 
(つづく)
 
 
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