昼の一時半まで寝るってどうよ自分。

 
新記録だよウボァ。
 
おとぼくがおもしろいですね。アニメ版、放送のときは飛び飛びだったんで一話からきちんと見直してますが。
同じキャラデザのダ・カーポ二期とは大違いだ(好きな人ごめんなさい)。
かしましよりこっちのほうが男→女な話としては好きかも知れない。
瑞穂くんがまだ端々に男っぽさが残ってるというか。
そりゃはずむくんは肉体からして女性になったから仕方ないんだけどさ。
いや、あれはあれで好きですよ?ただ個人的にはおとぼくのほうが好みだというだけで。
 
つーかマリみてとクロスさせたい衝動がぐわんと湧き上がってくる件(ぉ
アニメの終わり方なら繋げやすそうだし。空白期間が夏と冬に設けられてるのは大きい。
 
さて、なのユー話更新ー。
概ね種は大体今回で蒔けたはず……。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
 
 
魔法少女リリカルなのはStrikers −nocturne−
 
第七話 不屈の心に映るもの
 
 
「ちょ、ちょっと待ってください!!そんないきなり!!」
 
砂漠の砂に煤けたテントの中は、暗くひんやりとしていた。
 
そこは少年が幼き日々、寝食の場としてけっして短くない間利用していた場所。
否、場所というには語弊があるかもしれない。
流浪の度に移動を繰り返すその寝床は、けっしてひとところに留まったためしなどないのだから。
 
「僕にだって今の生活があります!!仕事だって……」
 
幼少を過ごしたその中で、ユーノは一人の老人と対峙する。
脇に控える男達からの視線を受けながらも、訴える。
 
「……それでも、頼みたい」
 
集まる男達、またちらほらと見える女達は皆、部族の中でも
特に立場が上位に位置する者たちばかり。悉くが老齢、壮年に達する外見をしている。
 
その中からの声が彼の答えを一蹴し、他の者たちも同調するように各々頷く。
 
「風が……必要なのだ。皆を導く、新たな風が」
「ですがっ」
「──長老」
 
ユーノの反論を遮り、彼の立つすぐ横に転移魔法陣が浮かび上がる。
 
「!?」
「ただいま、戻りました」
 
それはユーノの知る由もない、なのはの元に現れたあの女性。
フードを被ったその顔は暗いこのテントの中では窺うことはできない。
 
「首尾は」
「……一週間後にもう一度、と」
 
唯一、女性がこちらを見ているということだけは灯りを反射し照り返す瞳から読み取れた。
その色がどこか自分を責めるようであったことがユーノには、奇異なものに映った。
 
*   *   *
 
背後で、しゅんと軽快な音を立てて自動ドアが閉まる。
 
肩を落としたなのはは、目に留まった通路脇の手すりをそっと握る。
無限書庫にユーノはまだ、戻っていなかった。
 
「……」
 
せっかく勇気を出して、相談にやってきたというのに。
肝心の彼がいないでは意味がない。
 
「学会、だったんだ」
 
手を後ろに回し、壁に張り付くようにして天を仰ぐ。
 
彼が留守にしているだなんて、初耳だった。
それもこれもみんな、最近連絡をとっていなかった自分が悪いのだけれど。
息苦しいような、心細いような疎外感をなのはは感じてしまう。
 
「いないんだったら、しょうがないよね」
 
レイジングハートのことを彼に相談しようと思った。
もっと正確に言えば、「思った」ではない。「したかった」。
彼の部族から求められたことであり、レイジングハートは彼にもたらされたものなのだからと理由付けをしているだけで、一番にはなのはは彼と話がしたかったのだ。
スクライア族だからなどというのはおまけでしかない。
 
彼が相談に乗ってくれる、彼と話ができる。それが重要なのだ。
 
昨日の一件は、フェイトたちにすら曖昧にしか説明をしていない。
誰より先に、ユーノの意見が聞きたかったから。
大丈夫だから、と言って誤魔化した。
 
「いないんだったら」
 
頷き、呟きながらも落胆の色は到底隠せていない。
 
彼に会いたい。
ほんの数日前まで持っていた気持ちとは正反対の想いが、なのはの心を締め付ける。
 
「……」
 
自分が、彼を避けていたこと。
フェイトと彼が抱き合っていた光景。
彼のいない「お見合い」という出来事。
そして今、彼に会うことができなかったという現実。
 
想いとは裏腹の出来事ばかりが、心の深層に繰り返される。
 
特にフェイトと彼の逢瀬、また気さくな青年と自分とのお見合い、その二つを思い起こす度に心の表面がひどくざわつく。
 
「っ」
 
いつかそうであったように、無限書庫を出たばかりのこの場所で携帯が振動する。
ただ今回は、慌てて引っ張り出した少女を見る人間は周囲には、これといっていなかった。
 
まさか、ひょっとして。
一縷の期待を寄せ内に折り込まれたディスプレーを開き、目線が失望の色に変わる。
 
ユーノでは、ない。
そこにあったのは、お見合いの際連絡先を交換したあの朗らかな相手の青年の名。
しかしなのはが今望んでいるのは、彼ではない。
 
彼ではないのだ、けっして。
相手に失礼だと自分で思うほどに、彼女は落胆していた。
 
届いたメールを開きもせず、なのはは携帯を閉じる。
とても今、見る気にはなれない。
放心しかけた心に、その名前は嫌というほど自分が行ったことを実感させられる。
 
その実感が、ひどく苦い。
 
「どうして……」
 
どうしてなんだろう。
自分はどうしてお見合いなんてしたんだろう。
 
どうして────……そのことを、後悔しているのだろう。
 
後悔なんて、絶対にしないはずだったのに。
 
*   *   *
 
その夜、主の寝静まったなのはとフェイトの部屋で、『彼女』は一人考えていた。
いつものように、机の上に敷かれた布の上に安置され、静かに。
 
『……』
 
レイジングハート
機械である彼女には、睡眠というものは必要とされないし、そのような機能もない。
定期的なオーバーホールの際にメインの回路をオフにして擬似的に眠りにつくこともあるが、それもまた生物でいうところの睡眠とは些かに趣を異にするものだ。
どちらかといえば、物騒な言い方をするなら仮死状態といったほうが正しい。
 
ちなみにバルディッシュはエリオのストラーダに流用できそうなデータがあるということで、シャーリーのもとに預けられている。
 
AI以外の多くの機能を停止した上で最小限の稼動を行う、今現在の彼女の姿──スタンバイモードが、意識の有無の差はあれ睡眠状態に最も近いのかもしれない。
 
したがって、彼女にはたっぷりと時間があった。
少なくとも主が起きだす朝がやってくるまでの数時間は、彼女は一人で思考に専念できる。
 
この一人の──もとい、一機の時間を、レイジングハートはそれなりに気に入っていた。
 
睡眠もいらないし、長時間を一人で過ごすこととなったとしても退屈を感じることもない。
時折、感情豊かなリインフォースのことを羨ましく思うこともあるが、すべきことだけに集中できるというのはある意味、人間ほどの感情を与えられていないインテリジェントデバイスの特権ともいえる。
 
『……』
 
流石になのはも、レイジングハート本人(?)には昨日の出来事を告げていた。
自分たちの問題だ、当事者に伝えないわけにはいかない。
 
その上で、主はレイジングハートに尋ねた。
彼女を本来あった場所へと返すべきか、それともこのまま自分の下にいるか。
当人たる彼女の考えと、希望を。
 
『……my master is you』
 
ぐっすり眠っている主を起こさないよう、小さく呟く。
それが彼女の答えであり、彼女の意思。
自分にとって主とはつまり、高町なのはのこと。
彼女が一番自分を上手く扱ってくれるのだし、そのように自分もその機体を調整してきた。
 
答えなど、決まりきっているのだ。
 
だがそれがすんなりと認められるほど簡単な問題というわけでもないことも、
レイジングハート人工知能は認識している。
自分はあくまで機械、結局は長年にして現在の主たる高町なのはと、創造主として彼女を造り上げたスクライアの一族の所有権の問題なのだ。
 
そして、正規の手続きを踏んで譲渡されたものではない以上、正式な所有権はなのはにはない。
法的な手段を使われれば、彼女はレイジングハートを彼らに引き渡すしかないだろう。
 
『It does because of Euno's laziness.(彼の怠惰がいけないのです)』
 
まあ、怠惰というのは言いすぎかもしれないが。
もとの主……ユーノがきちんと話をつけていなかったのがそもそもいけないのである。
 
きっと溜息がつけるものならば、ついていただろう。
呆れというものを外界に表現してみせることができない以上、レイジングハートは黙るだけだが。
彼がそのように頼りないから、主が揺らいでしまうのだ。
お見合いの件といい、自分を巡るスクライア族との一件といい。
 
周囲からほぼ公認されたパートナーなのだから、もっと彼にはしっかりしてもらわねば。
これから先、主を支えていってもらうためにも。
 
──思考上だけのこととはいえ、小言臭すぎるだろうか。
 
主から離れるつもりはないと思いながらも、彼女は知らず知らずのうち
自分がなのはの下よりいなくなったあとのことを考えていた。
 
だから、ユーノに対する評価も少々厳しいものとなる。
あるいは女性型に設定された彼女のAIが、彼の些か頼りない部分をそう断じるのだろうか。
 
*   *   *
 
そして、噂をすればという言葉があるように。
 
『……?』
 
どれくらい一人で思考に耽っていたかという頃、レイジングハートは何処かからの通信を受信する。
 
専用の機材を使い行うほど正確ではないが、即座に発信源を探知。
生憎と、主のスケジュールなど様々な角度から検索をかけてもその次元、場所に心当たりはない。
前線の武装隊からの緊急支援要請とも違う。
それならば専用の緊急回線で送られてくるだろうし、本局からの正式な出動要請がなのはの携帯にくるはずだ。
 
レイジングハートは逡巡し、主たる少女を起こすべきかどうか迷う。
彼女を起こすのは簡単だ、通信のコール音をほんの数秒間ONにすれば、その音で目覚めるよう身体が既に覚えているのだから。
 
しばらく続くコールを体内に受信したままレイジングハートは考え、ハッキング等に備え入念にプロテクト処理を行った上でひとまず、彼女は自分で応対することにした。
急を要することや、主の力が必要ならばそれを確認してから起こせばいい。
 
『sorry,my master is sleeping.』<<あ、レイジングハート?>>
 
声の主は、先ほどからレイジングハートの思考回路に度々登場していた少年。
長距離通信のせいか、ノイズがいくぶん混じっている。
 <<なのは、やっぱり寝ちゃってるか……そっか>>
 
彼から自分に通信とは、そうそうあることではない。
殆どが携帯へのもので、なのはと直接話すケースが多い。
 
『Shall I wake her up?』<<いや、それはいい。時間も時間だし……>>
 
──いよいよもって珍しく、また不自然だ。
 
主に用がないとするならば、一体この男はこんな夜中に、どういった用向きでわざわざこれほど長距離の通信をしてきたのだろう。
 <<レイジングハート、きみに少し聞きたいことがあるんだ>>
『me?』
 
意を決したようにユーノが声を向けたのは、主ではなく彼女自身であった。
ない首を傾げる心境で、レイジングハートは彼の言葉を待った。
 <<昨日のこと……なのはに昨日、起こったことを>>
 
*   *   *
 
「おはようございまーす……ってあれ」
 
翌日。
出勤したなのはを出迎えたのは、がらんとした六課の分隊室。
自分が少し早く着きすぎたというのもあるのだろうが、八神家の面々はまだ出勤してきておらず、スバルとティアナも揃っていないところを見るにまだ到着していないのだろう。
 
実働部隊の面々で唯一そこにいたのは──……。
 
「あ、なのはさん。おはようございます」
 
朝錬がないにもかかわらず、エリオたった一人であった。
だが彼が来ているというのに、フェイトもキャロも姿が見当たらないのはどういうわけだろう。
朝、姿を見なかったからてっきり、先に来ているものだとばかり思っていた。
普段朝の弱い彼女が部屋に見当たらなかった場合、大体三人は仲良く一緒に出勤してくるものだが。
 
「エリオ、フェイトちゃんとキャロは?」
「あ、はい。えっと、キャロが急に部族の会議に呼ばれたらしくって」
「部族?……ル・ルシエの?じゃあ、その付き添い?」
「はい」
 
鞄をデスクに置きつつ、少年の言に納得する。
キャロは少数民族の出身だから、そういうこともあるだろう。
前に近い境遇のユーノが似たようなことでぼやいていたのを聴いた記憶がある。
ただ彼女の場合は追放されているはずだ。それを呼び戻すとは、何事だろうと思いつつ。
部族の暮らす場所が場所だけに、状況も合わせて過保護なフェイトが彼女の遠出を心配してついていくというのもわかる気がする。
聞くところによると、往復で三日ほどかかるところらしいし。
 
「あの……大丈夫ですか?」
「ん?なにが?」
「いや、フェイトさん、心配してたから……」
「な、なのはさん!!大変、大変です!!」
 
今野なのはさんを一人で残して行くのを──と繋げようとした少年の言葉は、朝の空気を切り裂いて六課へと駆け込んできた二人の少女によって、あっけなくかき消される。
 
主に慌てていたのは、泡を食った様子のツインテールの少女であったが。
 
「あ、二人ともおはよう。定時まではまだ時間あるんだし、そんなに慌てなくても……」
「それどころじゃないんですっ!!大変なんです!!」
 
両手を振り乱すティアナは、軽いパニックでも起こしているのではないかというほどに慌て、うろたえていた。
掴みかからんばかりの勢いの彼女を、スバルが必死に抑える。
 
「大変なんですよ!!」
「?」
「何、どうしたの?」
「今、本局の管理課に用があって寄ってきたんですけどっ……!!」
 
一方的に慌てられても、なのはもエリオも戸惑い首を傾げるだけだ。
彼女の切迫した様子が、不思議でならない。
 
しかし彼女の次の言葉に、その疑問は氷解した。
 
スクライア司書長が管理局を辞めたって、係官の人が!!」
 
そして同時に、思考が真っ白に塗りつぶされていく。
ユーノが?辞めた?どこを?
 
様々な単語が脳内に散らかり、漂い。整理されぬ状態でぐるぐるまわっている。
 
「あ!?なのはさん!?」
「おはよーさ……うおっ!?」
「なのはっ!?」
 
詳しい話を聞こう、などという考えは浮かばなかった。
真っ白な思考に弾かれるように、なのはは駆け出す。
  
出勤してきたはやてやシグナムたちを突き飛ばし、
静止するティアナやヴィータたちの声すら振り切って。
 
機動六課の分隊室から、彼女は飛び出した。
 
(つづく)
 
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