stsも。

 
正直、見ていてもうシリーズそのものが終わっていくようで切ないですわorz
多分今期の終わりが一番ダメージでかいっす。
一期→二期があるといいなーとは思っていたけれど流石にそこまで思ってなかった
二期→終了後割とすぐ三期発表
だったので。
作業中に水樹奈々をエンドレスにパソコンで流してるとよけいに。
「crystal letter」とかきちゃうともうね。
『物語は終わりを迎えるけど無限の明日に咲き誇ろう』
・・・終わり、迎えちゃうんだなぁorzいっそ一生なのはします宣言やってくんないかなぁ。
 
まずWeb拍手レスを。
 
>あれ?喪失辞書のなのはって19歳でしたっけ?いえ、10年前という表記があったもので。
修正しときましたorzご指摘に感謝。
 
>来た。来たきたキタ遂にキターッ!なのは&シグナム 大 復 活 ッ ! ! (興奮) なのはの方は思い出の場所と言う事である意味予想通りですが、シグナム姉さんのほうは石田先生とは予想外。…でもこの先生好気だったので嬉しいです。
ちなみに石田先生の車はボンドカー並みの超装備がっ(大嘘)
 
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今回はstsが終盤になるにつれてシリアスだわ書いてるのもシリアスにならざるをえないわで自分がちょっと耐え切れなくなったわけでして。それプラスシグナムさんお着替えの時間です。
そんな羽根の光第六話。
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 
 
「いいか、なのは。よく聞きなさい」
 
彼女に話したのは、父親だった。
兄も、姉も、母も一緒にその場にはいて。
改まった家族の醸し出す雰囲気に、きょとんとした顔を向けていた。
 
はやく、退院したいな。仕事も学校も、あまり留守にしておくわけにもいかないし。
動かない体のおかげでベッド上で暇を持て余していた少女が思っていたのは、その程度の事。
 
──楽器の弦がひとつずつ切れていくようだと、部屋の外の少女は思った。
 
細く、細く、少しずつ千切れていくようにその声は崩れ落ちていったから。
微かにぽつぽつと聞こえるばかりだった、入院中の少女と家族との会話。
それはもう、今ではもう父親か、母親か。
身を任せる相手がここから誰かはわからずとも縋りすすり泣く、弱々しい少女の泣き声しか今は聞こえない。
 
あいつだって、こんな風に。他人ではなく自分のことで普通に泣いたりするんだな。
あんなに強くて。どんな時でもどんな相手からもみんなを守ってきたあいつが。
 
自身もまた涙しながら、赤毛の少女は背中の扉越しに聞こえてくる声に思った。
同時に守れなかったことをただ、詫びた。
 
またその日、別の少女のもとに一通の封書が届いた。
 
『執務官試験 結果通知書』と。薄っぺらい封筒には、そのように書かれていて。
 
中身を、見るまでもなかった。
事務的に封を破り、中の一枚紙をちらと確認して。……それでおしまい。
興味そのものを失ったかのように、開かれた封書は外も内も、テーブルの上に捨て置かれる。
同居人と母が何か言いかけたのを、兄が止め。
あまり、気を落とすな。その一言だけで、リビングルームから自室に戻る少女を送り出した。
 
そして、少年は一人だった。
 
誰もいない、機械の並ぶ部屋で紅いひび割れた宝石を前に、一人座り込む。
考えることなど、きりがなかった。
頭に浮かぶそれらすべてが帰結するのは、自責。そして後悔の二文字。
 
彼ら、彼女ら四人、それぞれ場所は違えど。
見下ろす空は等しく美しく、雲ひとつなく。
その透き通った無垢な蒼さが憎く思えてくるほどにどこまでも遠く、晴れ渡っていた。
 
 
魔法少女リリカルなのはStrikers another9th −羽根の光−
 
第六話 ヴィータの願い
 
 
「──とりあえず、以上が来週からのリハビリのプログラムになります」
 
仮にも、階級を持つ武装隊の士官が相手である。
たとえまだ少女、十五歳にも満たない女の子であるとはいえ、看護師の言葉は丁寧であった。
 
丸く分厚い眼鏡の、いかにも柔和という言葉を体現しているかのような面立ちの二十代後半の看護師は、よろしいですか、と確認の意味を込めて少女を細目で見やる。
けっしてわざと目を細めているのではなく、もともとそのくらいにしか開いていないのだ。
 
「はい」
 
背もたれとなる部分を起こしたリクライニング式のベッドで、彼の言葉に少女は頷いた。
今はまだ、自分ひとりの力では身を起こすことも出来ない、手負いの空戦魔導師。
──いや、魔導師「だった」となるかもしれない、高町なのはという患者は、はっきりと。
 
三人の少年少女に囲まれながら、躊躇することなく、動くだけの範囲で精一杯に首を縦に揺り動かした。
 
「よろしく、お願いします」
 
ただそれだけで身体を駆け巡る、激しい痛みに布団の下に隠した拳を握り締めて。
付き添ってくれている三人、ユーノ、フェイト、ヴィータに心配をかけぬよう、必死に激痛を堪えながら彼女は看護師と言葉を交わす。
目覚めたばかりの頃は利いていた麻酔も今はなく、それにはひどく苦労を必要とした。
これ以上、心配をかけたくないから。
なのはは掌に爪が食い込むほどきつく、きつくその両手を拳の形に丸めていた。
 
*   *   *
 
時間は少々、遡る。
  
「フェイトちゃんが……試験を?」
「ああ……私のミスだ。よりによって最悪のタイミングで伝えてしまった」
 
ユーノたちが病室を訪れる少し前のことだ。なのはは空隊の様子を報せにやってきた、シグナムの訪問を受けていた。
部隊や立場こそ違えど、同じ空を守る知人同士。なのはの所属する部隊の隊長や部下達からの言づても携えて、彼女はドアの向こうから顔を覗かせたのだ。
そして時間もあるからと、ベッドを起こしてちょっとした話し相手になってくれている。
 
フェイトが執務官試験を途中で投げ出したことを聞いたのは、その席上での話でだった。
 
椅子に座りベッド脇で膝を組むシグナムは、悔やんでいるようだった。
けれど、そうではないと思う。
自分がいけないのだ、となのはは視線を落とした。
 
間が悪いのは自分も一緒……いや、むしろ自分が原因だ。
こんな怪我さえしなければ。自分が無事に帰ってきていれば、フェイトだって満足のいく形で試験を完遂できたはずなのに。
友に不要な足踏みをさせてしまったのは、自分が心配をかけてしまったせいだ。
 
「そんな顔をするな。テスタロッサが見たら余計落ち込むぞ」
 
自分を責めていたなのはに、シグナムが声をかける。
 
実際ここに来る前、彼女はフェイトと会ってきていた。
不合格の事実自体はクロノから聞かされてはいたものの、直に会う少女は平気なようにしていても、どこか元気がなく。
なのはのことを差し引いてもやはり、今までの沈みようとはまた違ったものを漂わせていた。
 
もちろんシグナムがそのようなことをはっきりとなのはに告げられるはずもなく、彼女にとっては想像の範疇でしかなかったのだが。
 
「もうすぐ、ヴィータがくると思うが……騒がしかったらすまんな。先に謝っておく」
ヴィータちゃんが?」
「ああ。……とにかく、気に病んだりしなくていい。早く身体を治すことだけ考えろ。それが一番、あの子らのためになる」
 
あの子ら、というのがヴィータとフェイトのことを言っているのだということは流石になのはにもわかった。
けれど烈火の将の言葉にもう一人分、特に加えられている人物の存在にまでは思い至らない。
自分が職場を空けることのデメリットについて腐れ縁の悪友から懇々と説教を受け続ける、少年のことにまでは。
 
無限書庫に寄って、レティ提督のところに顔を出す。
勤務時間の合間に顔を見せてくれた年上の友人はそういって、静かに部屋の扉を閉めていった。
 
新たな訪問者が三人、順を折るようにして彼女の元を訪れたのは間もなくのこと。
 
大きなリュックサックを背負った私服のヴィータに、一応ではあるが黒い管理局制服のフェイト。
最後のユーノと、数を増やすにつれて彼らの表情が厳しいもの、疲れを帯びたものであったというのは、けっしてなのはの気のせいではない。
 
*   *   *
 
そしてシグナムは彼らが看護師からの説明を受けている今そのとき、上司二人と顔を合わせていた。
なのはに、言ったとおり。ただしその理由までは彼女には告げていないけれど。
 
友人でもあるクロノ・ハラオウンに入局当初からの後見・直接の上司であるレティ・ロウランの二人に自分が会わねばならなかったその理由を。
 
「本当、みんな好き勝手提出してくれちゃって」
「「すいません」」
 
ぼやく提督のその顔に、不快感はなかった。それでも一応クロノ共々儀礼的にレティへと頭を下げる。
彼ら、彼女ら──二人の提督とシグナムとの間のテーブルには、三通の封筒があった。
管理局の公的な文書に使用される白い、縁取りに金色が施されたそれにはそれぞれ、手書きの文字が並ぶ。
 
“休職願い”、“休職届”。一様に殆ど同じ意味を読み取ることの出来る文字が、上を向いた表面には躍っている。
お世辞にも綺麗とは言えない文字、かわいらしい丸みを帯びた文字。
そして几帳面な丁寧さを感じさせる文字と、それら三種類の筆跡は、書いた人間がばらばらであることを見る者へと伝えていた。
 
「いいのよ。それくらい、三人とも……なのはちゃんのことが大好きなんでしょう?」
 
乱暴な字体は、航空武装隊所属騎士、ヴィータのもの。
丸っこいそれを書いたのは、次元航行隊執務官候補生として忙しい日々を余儀なくされる、フェイトによるもので。
最後の一通は時空管理局の頭脳。無限書庫司書長として局に今や欠くべからざる人物となったユーノから提出された要望書だ。
 
三人が三人、一様に願うのは当分の間休職すること。
理由もまた皆同じく、重傷患者となった友の看護に専念するためと共通していた。
 
「まあ、はいそうですかとほいほい許可を出すわけにもいかないのだけれどね」
 
彼ら全員、入局後順調なキャリアを積んできた人間である。
故に看病などという私的な理由で長期の欠勤を容認できるような半可な立場には留まっていない。
 
「フェイトには呼び出しがあればすぐに応じるという条件で、私が本局待機を許可しました。学校にもきちんといかせます」
 
先任提督かつ母の親友であるレティに、クロノは丁寧な口調で応じた。
一人称も日常的に使う『僕』ではなく仕事上の『私』だ。
 
「ユーノは扱いとしては業務委託を受けた民間人です。基本値以上の仕事を強制することはできませんが……シフトを新人中心に組みなおすということで同意してくれました」
 
彼らには明確に、すべきことがある。
しなければならないことを投げ出してまで自分のためにその時間が消費されることを、なのはは喜ばないだろう。
クロノも、レティも。話を聞いているシグナムも同様に、クロノが彼らに対して提示し受け入れさせた妥協案は妥当であると思えた。
管理局の二十四時間、常に続くその業務に携わる者として。なのはのことを彼ら同様に知る者として。
 
「それで、ヴィータは?」
 
そのことをわかっていてシグナムが、はやてたち八神家の人間が出した結論は身内に甘いだけのものなのかもしれない。
 
自分に向いた二組の視線に、ゆっくりと口を開く。
 
「受理されると思っているのかと、訊きました。確かにヴィータ武装隊内ではそれなりに名の通った存在ですが、役職自体は大したものには就いていません」
 
彼女を束縛するものがあるとすれば、その知れた名前と、実力。そして影響力だけ。
もちろんそれだけでも相当なものではあるが、ユーノやフェイトに比べれば随分動きやすい位置にいる。
 
「残っている有休を全部使う。それでも足りなければかまわない、降格でも首にでも好きにしろ、と」
 
家族に背を向け、ひたすら鞄に着替えを詰めながら彼女は言った。
また、答えた。
自分たちはただ局員として働いているのではない、かつての業の分を、世界に返すために局にいるということを諭したシグナムに対して。
 
関係ない、と。
今は守れなかった分の借りを彼女に返す。ただそれだけだ、それ以外のことなんてない。──と。
普段のつんつんした口調ではなく、思いつめたような不愛想な声で返してきたのだ。
 
“大体、仲間ひとり守れねー奴が世界のためなんてできるわけねーだろ”
 
「そう」
「はい。……そこで、私──いえ。我々ヴォルケンリッター全員、及び主八神はやての総意としてレティ・ロウラン提督に陳情したいことがあるのですが」
 
その様子を見たはやてが、他の三人に提案したこと。
ヴィータの部屋から撤収し、語ったこと、それは。
 
「言ってみなさい」
 
それは──……。
 
ヴィータの休職を、認めてやってはもらえないでしょうか」
「……」
「我々、全員の有給休暇も休日も返上してかまいません。ヴィータの抜けた分は自分とザフィーラが任務に回ります」
 
シグナムは、今度は心からの頭を下げた。
自分ひとりの意ではなく、家族全員の考えを代表して懇願する。
ヴィータが一通りの用意を終えて眠りについたあとで彼女を抜きに招集された一家の会議によって一致した、一家の意志を伝えんと。
  
「あの子に、テスタロッサやユーノの分も付き添わせてやりたいのです。高町なのは准尉の傷が、癒えるまで」
 
彼女があのように。主や家族のため以外にあそこまで必死になる姿を見るのは皆、初めてであったから。
 
ヴィータがいることでフェイトやユーノにかかる精神的、肉体的な負担もいくらかは軽くなるはずだ。
けっしてただ家族の願いを叶えたいがゆえの我侭だけではない。
三人揃っては不可能であっても、ヴィータひとりでも彼女の側にいることができれば。
きっとなのはの事故に深く心を痛めている三人にとって、それはけっして無意味ではない。
 
いくら人情家のレティが相手とはいえ、多少の無茶がある勝手なプランであることは百も承知。
それゆえシグナムは、深々と頭を下げ続ける。
 
「返上するのは有休だけで十分よ。もともとあなたたち使わないでしょう。そのくらい常日頃の業務をしっかりやってくれているのだし」
 
──結論は、イエスと捉えていいものだった。
 
仕事に穴を開けないなら文句はない。
建前上はヴィータのことは今回の失態による謹慎、となるかもしれないけれど。
そのほうが上も納得しやすいと、レティは言った。
 
「ただし、シグナム。あなたにひとつだけ条件よ。部隊を掛け持ちする気なら──」
 
けれど、シグナムが顔をあげ謝辞の言葉を上司へと述べる前に。
 
「きちんと上下とも武装隊の制服を着ること」
 
紅いコートのアンダースーツにタイトスカートを組み合わせた女子局員としては珍しい格好の烈火の将に対して、彼女は非常に窮屈な要求をしてきたのだった。
 
八神家のシグナムの部屋のクローゼットには、支給されたまま袖を通していない制服が、今もビニールを被って眠っている。
冗談めかした言い方が逆に、拒否させてもらえそうになかった。

(つづく)
 
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