ちゃかちゃか行こう。

 
ケインさんだいぶん具合悪そうねい。
 
まずはWeb拍手レスー
 
>受験生フェイト、クロノがパパでユーノが先生みたいな。
まあ、ユーノ「先生」と数年後には呼ばれてますしねー。
 
>羽根の光最新話拝読しました。生来の性格上、このすれ違いはやはり必然的なものですね。二度目の試験結果は…まあ、言わずもがな、ですが。その後のなのはとフェイト、そしてなのはの意志とフェイトの「護る」ことがどのようになるのかが楽しみです。
徹底的にすれ違う昼ドラ仕様がうちのssです(ぉ
 
>ああ!18禁verも見てみたい!エロパロ板も最近は有力作家さんがいなくなってきて微妙に過疎ってるのでこのサイトじゃ載せられないエロ作品だけでも投下してもらえたらなぁ、と思ってますあと続きもゼヒ!
んー、一応けじめの問題だと思ってるんで復帰はかんがえてないです。申し訳ない。
作家さん数自体は十分にいらっしゃると思いますし。
 
>ヴァイスよりシグナムのほうが男前に見えてくるのはこれ如何に?
多分年齢差。
 
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で、nocturne二期更新でーす。
 
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
──頬を濡らしているのは、涙だろうか。それとも、天からとめどなく降り注ぐ雨だろうか。
 
フェイト自身にだって、そんなことはわからなかった。
足どりなんてもう、滅茶苦茶で。心臓が破裂しそうなくらい、息もまともなリズムは刻んでいないというのに。
心から、寒いと思う。絶え間なく身を打っていく雨よりも遥かに、身体は芯から冷え切っている。
 
「……っ……」
 
きつく瞑った両目は何も見たくはないし、見えていない。
闇雲に前に出す足はもつれ、何度も躓きそうになりながら彼女はひたすら駆け抜ける。
 
閃光、そんないいものじゃない。音速。あるわけがない。
そこにあるのは不恰好に現実から遠ざかりただ逃げようとする、ちっぽけな存在一つでしかない。
 
走っても走っても止まらない底冷えする震えに、フェイトは自分を抱いた。
 
消えて、くれないのだ。なのはが。ユーノが。
いくら両目を閉じても、どれほど必死に首を振って、逃れようとしても。
 
二人が自分の目の前で自覚のないまま見せたその決定的な光景が、瞼の裏から剥がれていってくれない。
 
「見つけた」
「っ!?」
 
視界のないまま濡れ鼠で駆け続ける彼女を、遮るものがあった。
 
ぶつかったわけではない。そっと、押し留めるような。
温もりのある、柔らかい感触にフェイトは受け止められる。
 
「あ……」
「雨、急に強くなってきたからね。近くまで車回してきたんだ、さ、戻ろう」
 
びしょびしょの長髪を顔に張り付かせた査察官──いや、青年はそういってフェイトの手を引いた。
 
彼だって、フェイトと同じくらいずぶ濡れになっていたのに。
その掌は握り返す彼女とは対照的に、ひどくあたたかかった。
 
 
魔法少女リリカルなのはStrikers Nocturne -revision-
 
第四話 通わない心さえ、抱えて
 
 
探し物は大して多くもない荷物のおかげで、さほどの苦労もかけず見つかった。
 
「っと、あったあった」
 
持ってきていてよかった、と。
ヴェロッサはひっかきまわしていた後部座席の荷物から、淡い色のタオルを引きずり出す。
自分の分と、フェイトの分。それぞれ、ずぶ濡れになった車内の二人のため、色違いを一枚ずつ。
 
「とりあえず、こんなものでも髪を拭くくらいはできるから」
 
振り返り、返事のない助手席の少女に目を移す。
 
彼女は、震えていた。頭を垂れ、両腕を抱き。全身をじっとりと濡らしたまま、その金色の髪から雫を滴らせる。
手を引いて急ぎ車のところまで戻ってきてからも、その道中も、ヴェロッサと再び合流して以来彼女は未だ一言も言葉を発していない。
 
自分とはなれている間に、なにかあったのだろうか。……いや、ひょっとせずともこの様子からして多分あったのだ。
生憎とそれが何なのかを類推する材料は不足しすぎているし、聞けるような雰囲気でもないが。
自身は頭からタオルを被り、わしゃわしゃやりながら。俯きっぱなしの彼女の目に見えるようにタオルを出してやる。
 
「濡れっぱなしじゃ風邪引くよ。よかったら、使って」

認識にさえも、時間がかかったのだろう。
ヴェロッサが差し出したタオルに彼女が手を伸ばすまで、きっかり3秒の時間を必要とした。
 
そして会釈のような、感謝の意を込めていると思われる頷きをひとつ。
 
「……すいません。車内、濡らしてしまって」
 
ようやく彼女は、それだけぽつりと口を開いた。
短い謝罪の一言だけがやっと、搾り出されたのだ。
 
尤も、別にヴェロッサは気にしているわけでもないし、謝罪を欲しいなどとも思っていないのだけれど。
 
白い指先が摘み受け取ろうとするクリーム色のタオルを、一足先に引き離して彼女の濡れた頭に被せる。
空を切った掌にフェイトは顔を上げ、髪の金色が柔らかい黄色に覆われる。
 
「僕としては、ごめんなさいよりありがとうのほうが嬉しいかな。……さて、と」
「アコース……査察官?」
「シートベルトつけて。びしょびしょなのにそのままってわけにもいかないだろ?」
 
むしろ彼女に必要なのは、謝罪することではない。
彼女の自分に対する呼び方が聞き慣れた堅苦しいものに戻っている──……気付きながらもそこには触れず、ヴェロッサはキーをまわす。
 
「シャッハを呼ぶから、うちに行こう。きみの家──本局の寮よりは近いはずだ」
 
冷え切った心と身体を、温めること。
彼女の震えが寒さによるものではないことを察しつつもヴェロッサは、手を引いた際の氷のように冷たくなった彼女の体温を、はっきりと覚えていた。
 
反論や遠慮をする気力もないのか、黙って彼女はシートベルトに手を伸ばした。
 
ほどなく、雨中の森を車は後にし走り始める。
 
彼がフェイトにそうしたように、とある女性を連れ雨中をひた走る一人の青年が一瞬立ち止まり。
見覚えのある車が発進していくその様子を、想い人共々見送っていたことに彼は気付かなかった。
無論、俯く彼女も。
 
親友と、その愛する青年の視線が自分たちの乗る車に注がれていることなど、知る由もない。
 
 
*   *   *
 
「ロッサ……あなたという人は……」
 
今更の無用な遠慮を繰り返すフェイトを、半分強引にクラナガンの自宅に上げ、バスルームに押し込み。
鳴らされた呼び鈴にドアを開くと、立っていたのはジト目の暴力シスター……もとい、幼少期からの親愛なる教育係だった。
 
「シャッハ?」
「ご友人の妹君ををいきなり自宅に連れ込んだ挙句、女性用の下着を買ってきてくれなど……私の教育が間違っていたのでしょうか……」
「……シャッハ。それは誤解だ」
 
リビングへと招き入れ、どっかとソファに腰を下ろす。
濡れた服は手早く着替えたものの、残った水分がまだ光るヴェロッサの頭にはまだタオルが載っていた。
ごしごしと擦り水分を吸い取らせつつ、簡単に事情を説明する。
 
「出先で雨に降られただけだよ。ずぶ濡れだったし、そのまま帰すわけにもいかないだろう?」
「……本当ですね?」
「本当……っていうか連絡したときにも説明しただろ。ちょうど別行動してたときに雨に降られて、それで──……」
 
なんだかんだいいつつも、手際よくシャッハは動いてくれていた。
取り急ぎきてもらったが、話を聞くのもそこそこに買ってきたものをバスルームに届けるべく、既に彼女はリビング脇の扉に手をかけている。
 
そして言葉を切ったヴェロッサに、「それで?」といった表情で視線を送り次の言葉を待っていた。
 
「それで、見つけたときには──震えていた。……彼女は多分、泣いていたと思う」
 
頭からタオルを引き摺り下ろし、溜息混じりにヴェロッサは呟いた。
 
あのとき雨の中からこちらに走ってきたずぶ濡れの彼女は、とにかく今にも倒れそうな、覚束ない滅茶苦茶な足どりで。
ヴェロッサに受け止められ見上げてきた顔には雨の雫とは違う、もうひとつの水滴が伝っていた。
見間違いなどではない。左右の瞳からそれぞれに零れる、熱い雫が雨に紛れて確かにそこにはあったのだ。
 
「……嫌な、涙だったな」
「?」
 
天を仰ぎ、タオルを顔から被る。
あれはヴェロッサにとっては身に覚えのありすぎる、他人のものではあっても思い出したくない悲しみの顔だった。
知っているからこそ同時に、わかってしまう。その泣き顔と、涙に含まれた成分が。
そんな顔を人がしてしまう、理由というものが。
 
「身につまされるというか、ね。諦めなきゃいけないことは僕にもあったから」
「……?」
「想っても、叶わない。そういう顔……やっぱり見ていて気持ちのいいものじゃないな、って」
 
諦めなくてはならないこと。そして、諦めたくても諦めきれないこと。
その耐え難いジレンマの経験はヴェロッサにもある。
遥かずっと昔、まだ何も知らない子供の自分は、どうしようもない現実に痛いほどそのことを教えられた。
 
どんなに辛かろうが、諦めねばならぬこと、納得せねばならぬことがある。
辛うじて幼い頃の自分はそれを受け入れ、耐えることができた。だが、彼女は?
 
「とりあえず、お茶の用意くらい……いえ、それも私がやりましょう。ロッサもシャワーの準備を済ませておくように」
「了解。たのむよ、シャッハ」
 
ぱたん、とシャッハは後ろ手に扉を閉めていった。
 
彼女が出て行ってから、ヴェロッサはふと通信端末を操作しメールボックスを開く。
 
どたばたしていて忘れていたが、一応査察官という身分上、送られてくる文書や通信の記録は帰宅する毎にチェックする必要があった。
また、身体がそう習慣付いていた。
緊急のものは直通の回線で送られリアルタイムで繋げられるが、期限の決まった申し送り事項やごくプライベートなものまではそうはいかない。
 
端末を組み込んだデバイスを持ち歩けばいいのだろうが、それもなんとなくヴェロッサの性には合わなかった。
……なにより、昔からデバイスには痛い目にあわされているのだ。つい先ほど下着を買ってきてもらった女性の愛機なんかには、特に。
 
新着の捜査情報が数件届いていたが、これといって、急ぎ片付ける必要のある案件はなし。
仕事用のフォルダーのチェックを終えてからプライベートのほうに移るのも、一応仕事を優先しているからだ。
こう見えて個人的に連絡先を交換し合うような友人が、ロッサにはあまりいないというのもあるけれど。
 
「……新着、一件?」
 
──車、見ましたよ。そんなタイトルのつけられた書面のファイルに記された受信時刻は、ほんの一時間ほど前になっていた。
 
*   *   *
 
温かいお湯が、全身を流れ落ちていく。
熱すぎず、かといって冷たすぎることもなく。
頭上から降り注ぐそのぬくもりは、雨に濡れ冷え切った身体を、芯から暖めなおしてくれる優しい恵みの水であるはずだった。
 
「……」
 
だがその下に立つフェイトには、見上げたシャワーから一定の勢いで放出されるそれらと土砂降りの雨との違いとを見出すことはできない。
降ってくる水が、あたたかろうが冷たかろうが。なにも変わらない。
心の奥は水の温度など関係なく、ずっと冷え切ったままなのだから。
 
状況は、何も変わらない。
こんな風に絶えず水に打たれながら自分が見た光景はひとつきり。
 
なのはと、ユーノと。そして二人が──……。

「ユー、ノ、と……」
 
──“無理しとるんと違うか?”
 
鮮明すぎるほど鮮明に、雨の中飛び込んできた映像が脳裏に帰ってくる。
重なるのはいつか、機動六課在りし頃アルコールの匂いと共に友が尋ねてきた問いの声。
あの時は、平気だった。友の気遣いは杞憂だと、そう信じていた。
 
「……へいきな、もん、か……っ」
 
でもそれは自分を納得させるため。信じようとしていただけにすぎなかった。
 
今となってはずしりと心に重く響くその言葉に、フェイトは両腕を、頭を壁に預ける。
白いタイルを伝い、身体が徐々に重力へと沈みこんでいく。
 
「……っ……う、う……っ」
 
大丈夫だと、思っていた。
親友と彼との、心を通わせ結ばれた新たな始まりを自分は、心から喜び祝福していけると思っていた。
実際その通り、自分はなのはの背中を押した。その事に対して後悔はないし、間違っていたとも思わない。
 
でも。
 
──大丈夫なんかじゃ、ない。
 
「う、あ…………っ」
 
シャワーの水流が全身を濡らす中、フェイトは膝を折った。
 
二人の、交歓。自分にはけっして割り込んでいくことの出来ぬ二人だけの世界。
なのはとユーノがそんな空間を作り出していた。
雨中に生まれたその絶対の領域に、ただ自分は見ているしか出来なかった。
 
自分は彼のことを割り切ることも、振り切ることもできてはいなかったのだ。
目にした光景が教えてくれたのは、幼き日から未だ続く、彼への想い。そして己の心の中にあった偽らざる真実だった。
その事実を認識することが、納得。理解。心の中で自分を押し留めていたそれら全てを粉々に砕き散らしていって。
 
気がつくとヴェロッサに受け止められるまでひたすらに、自分はその濁流のような想いの洪水に背を向け逃げていたのだ。
 
声を震わせて咽び泣く自分が、フェイトには止められなかった。
自覚が自制を凌駕し自分ではどうすることもできない。
ユーノの一番はなのはで、なのはの一番もユーノ。それが二人にとって最も自然な形。そんな納得ももはやなんの歯止めにもならなかった。
 
ユーノが、好きだ。なのはのことが好きな彼のことが、今でも大好きだ。
なのはの隣で笑う彼に、自分の隣で笑っていて欲しい。ずっと、ずっと。その笑顔を見ていたいと心から思う。
彼と心を通わせたい。彼の隣にいたい。なのはではなく自分に笑顔を向けて欲しい。その気持ちはもう、抑えられない。
 
叶わぬ願いだとわかっていても、フェイトに決壊するその想いを止める術はなかった。
想いが溢れ、涙となってシャワーの水に洗い流されていく。
 
何の解決にもならぬと知りながら彼女に出来るのは、シャワーの冷たい無機質なぬくもりに全身を打たれ、ただただ嗚咽することだけだった。
 
(つづく)
 
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